天才マーケター盛岡毅氏の名著「確率思考の戦略論」の要点を抽出した記事です。
- 自分(既に何度か書籍を読んだことがある人)
本書はマーケティングに携わる人なら何度も読み返すべき名著中の名著。
要点だけすぐ見返したいと思い立ち、メモをとった記録のシェアになります。
この記事を読むだけでも要点はつかめます。
しかし、実際に本を読み、豊富な事例やデータから学ぶことでより理解度が高まるのは間違いないでしょう。
「ビジネス戦略の成否は『確率』で決まる。その確率はある程度操作できる」
この記事のもくじ
市場構造の本質
前置きとして、資本主義社会のDNA(本質)は「人間の欲」である。
物事は「本質」によって構造が形づくられ、さまざまな「現象」が生まれる。
自分の戦う〝市場構造の本質〟をを知れば、市場で勝つために戦略をどこに集中すべきかが明瞭になり、成功確率を高められる。
私が行ってきたのは、市場構造を精緻に理解し「勝てる戦いを見つけること」「市場構造を利用する方法を考えること」に思考を集中することだ。
例えば自動車を運転するとき、ハンドル、ブレーキ、アクセル、ミッションの役割を理解しようとするだろう。事故るからだ。それと同様、ビジネスでは市場構造が重要。しかし、なぜか無頓着で平気で無茶をする人が多い。
市場構造の本質とは何なのだろうか?
市場構造の本質は消費者のプレファレンス
市場構造の本質は消費者のプレファレンスです。
プレファレンスとは、ブランドに対する消費者の相対的な好感度(好み)のこと。
プレファレンスは主に、ブランド・エクイティー、価格、製品パフォーマンスの3つで決定される。
※ブランド・エクイティとは、あるブランドが顧客、取引先、実績、または社会全体に対して持つさまざまな無形的な資産価値を指す
・市場構造の本質はカテゴリーに関係なく同じ
・プレファレンスの高いものはより高頻度で購買される
・ブランドの力関係は最終的に「シェア」で表される
人は購入候補からランダムに商品を選ぶ
人は購入経験則から「買ってイイと思う候補」をいくつか持っていて、それをEvoked Set(エボークト・セット)という。
プレファレンス順に購入確率が高くなり、それらをランダムに選んでいる。
以下に私のビールを買う場合の事例を挙げて解説します。
- ザ・プレミアム・モルツ(50%)
- エビスビール(30%)
- 一番搾り(10%)
- 黒ラベル(10%)
→ 正10面体のサイコロの面にプレミアムモルツが5つ、恵比寿ビールが3つ入っているイメージ
我々は購入意思決定の争奪戦をおこなっている。奪い合っているのは「消費者のプレファレンス」だ。
プレファレンス(好き)を上げる = シェアを上げる
経営資源を集中すべきはプレファレンスだ!
市場競争とはプレファレンス(好き)の奪い合い。
市場構造を理解するほど消費者視点でなければ市場競争に勝てない。
市場構造を正しく徹底的に理解するほど消費者視点で会社をドライブすることがどれだけ大切かがわかり、コントロールすべきはプレファレンスしかないことが数学的にも理解できる。
どの企業も消費者視点を最重視して、プレファレンス向上に経営資源を集中せよ!
戦略の本質
戦略の本質は勝てる戦を探すこと。
市場構造にはコントロールすべきものと、コントロールしにくいものがある。戦略の失敗の多くはコントロールしにくいものに経営資源を投入しているケースが多い。
ほとんどの市場において当てはまる勝てる戦の探し方を解説する
戦略の焦点は3つしかない
前提として売り上げを伸ばすためには
- 自社ブランドへのプレファレンスを高める
- 認知を高める
- 配荷を高める
の3つしかない。
最初からこの3つのビジネスドライバー(センターピン)に絞って探していくことで、確率の高い戦略に早くたどり着く。
- 認知にもっと伸びしろはないか?
- 配荷にもっと工夫はできないか?
- プレファレンスに革新的な変化を起こす方法はないか?
頭の中で追っかけて、仮説を立てながら思考をすること。
しかし、プレファレンス以前に「認知」と「配荷」にわかりやすい大きな問題があることが多い。
この「認知」と「配荷」によってブランドの可能性は一気に制限されるので、この2点をひろげることが効果的。
「認知」と「配荷」を伸ばすことは、一番わかりやすくて確実性の高い勝てる戦です。
ビジネスを作る認知の本質は、消費者のエボークト・セットの中に入っているか。(知られているだけでは認知の質が低い)
パンテーンのような圧倒的なブランドでさえも配荷に大きな伸び代があったように、認知とならんで確実な経営資源の投資先
ともに伸び代がある場合はラッキーだ
「プレファレンスを高める」とは?
ブランドの最大ポテンシャルを決定するためにプレファレンスは最重要です。
プレファレンスとは、ブランドに対する消費者の相対的な好感度(好み・魅力度)のこと。
コントロールできるのは『消費者から選ばれる確率』しかありません。
戦略の本質とは、市場全体の中で自社ブランドへの1人あたりの投票数をどう増やすかを考えることなのです。
プレファレンス拡大のヒント
プレファレンスの拡大には、水平拡大と垂直拡大があります。
水平拡大 → ファンの数を増やして拡大すること
垂直拡大 → 既存ファン1人辺りにもっと多く投票してもらうこと
つまり、既存ユーザーを深掘りするよりも、そのほかを耕す方がマーケットっがずっと大きい場合が多いです。
さらに、より魅力のあるものはより皆が好きになっていくと同時に、結果として既存ファンはもっと好きになってくれます。
そのために「誰をターゲットとして狙うのか」を決めることが『消費者から選ばれる確率』を高める上で重要です。
■ターゲティングについて
消費者を区切ってターゲティングすることは『消費者から選ばれる確率』を増やすためです。
決して自社ブランドの『消費者から選ばれる確率』を狭めるためではありません。
ターゲティングや競合との差別化という手段が先になってしまって、不必要に自社ブランドの『消費者から選ばれる確率』を狭めてしまってるケースは多いのです。
ターゲティングは、自社ブランドの市場全体における魅力度(プレファレンス)を拡大するための手段です。
■ポジショニングについて
ポジショニングはターゲティングと同様に狭めるために行うわけではありません。
エクイティー(ブランドの無形価値)を尖らせて『消費者から選ばれる確率』を増やす手段であり、プレファレンスを伸ばす役割です。
例えば、消費者にわかりにくいミネラルウォーターなどを販売する場合、ブランドエクイティーの増強に集中が必要になります。
たとえば、「Liquid Death」という商品。
入っているのはただの水ですが、1本500円。ビジュアルからは水とは想像し難く、ビールやエナジードリンクが入っていそうな雰囲気です。米国のスーパーやオンライン、コンサート会場などで同製品を発売したところ、「お酒を飲む場で飲んでもダサくない水」として話題になり、65億円の売り上げを上げました。
■差別化について
重要なのは、差別化は市場全体から自社への『消費者から選ばれる確率』を増やすためにやっている目的意識です。
『消費者から選ばれる確率』が増えない意味のない差別化を行っているケースもよくみられます。
結局はプレファレンスを高めるゲーム
我々がフォーカスすべきは、競合に対して相対的にプレファレンス(サイコロの自社ブランドの目が出る割合)を上げることです。
ディズニーランドの成功によりテーマパークは“あるテーマによって統一された世界観で非日常を強調することでプレファレンスを挙げている戦略”しか存在しないような意見がありました。
しかし、それも一つの『消費者から選ばれる確率』を高める手段の一つでしかありません。
私は、結局は『消費者から選ばれる確率』を高めるゲームだということを知ってました。
なので、ディズニーランドのやり方以外にも『消費者から選ばれる確率』を高める方法がいくつもあることは見えていました。
戦略は明確な目的が不可欠
戦略は明確な目的が不可欠です。
企業のリーダーにとって、目標設定こそが最初で最重要な仕事。
戦略とは、到達したい高い「目的」にたどりつくために組んでいく「足場」みたいなもの。
登りたい壁があるならば、まず足場を作る技術が必要です。どんな高い壁でも、階段さえ作れば登れる。まずはそれを信じることです。
・成功するためには、純粋に「成功する確率が高い戦略を見つけられるか?そしてそれを選べるか?」ということ。戦略レベルの議論に「感情」はいりません。
・自分自身の時間をどこに集中して使えば戦果が最大化するか
・自分以外の人々をどこにどう集中させて使えば戦果が最大化するか
・戦術の重要性を組織全体に浸透させて、戦術局面に従事する人々の士気を高めて良い仕事をしてもらう
・「熱」は人に伝わる。人々の中心に立つリーダーの圧倒的な熱量は、直接それに触れた人から、その部下や周辺へ、そしてそのまた周辺へ拡散する。最初の熱源が「熱い」のと「ぬるい」のでは、組織全体の体温に決定的な差が生まれる。後者では仕事をしない人(できな人)が増える
マーケターを機能させる組織が必要
優秀なマーケターを1人雇ったとしても何かが大きく変わることは期待できません。
会社組織という機械がうまくいっていない時に、部品交換だけ少々したとしても変わらりません。なぜなら、ほとんどの場合は部品の問題でなく、機械の構造自体の問題だからです。
優秀なマーケターは、会社を勝たせるために会社レベルの意思決定にズケズケと踏み込みますし、間違ったやり方をしていれば徹底的に変革しようとします。
経営者にとって予定調和な存在にはならないはずです。
率直に言えば、会社の重要な意思決定を消費者の代理人であるマーケターに委ねる覚悟もないのに、消費者プレファレンスにおいて勝ちに行く会社を夢想するのはやめた方が良い。
マーケティング組織が共有すべき最重要な原則は『消費者視点である』ということ。
消費者理解に投資し、ブランディング・製品・サービスの全てにおいて、消費者視点で物事を是非を考えて消費者の自社ブランドに対するプレファレンスを高めることを最上位の判断と行動の基準に据えている組織である必要があります。
よって、個人や部門間のしがらみをぶった斬ってでも消費者価値としてのベストを押し通す強力な意思決定の仕組みを人為的に作る必要があります。
完璧な組織はない
大前提として「完璧な組織はない」と考えています。
攻守のバランスが取れた組織は作れますが、両方が中途半端な組織である可能性も大きいです。
そのような組織組織構築を選択しても「特徴」が生まれ必ず強みと弱みが生まれます。
完璧な組織などあり得ないことを理解した上で、組織の目的と戦略に合致した組織構造を選ぶのです。
それは、自分の組織が置かれた文脈の中で勝ち残っていくために必要な「強み」をどこかに選ぶこと。しかし選んで実行した瞬間に、その強みの裏側に弱点を同時に抱えることになります。
組織構築の選択をするということは、分かった上でその組織の弱点をどこに作るのかという意図的な選択だと言えます。
上司の最大の仕事
常に経営資源が不足している中で、部下は上司を選べず、上司も部下を選べない。
上司としての最大の仕事の一つは、〝自分自身の認識を変える〟ことで、組織の人的資源を増やすこと。
部下一人一人の特徴に注目して理解し、その強みを発揮させること。
どんな人間にも特徴がある
どんな人間にも特徴がある。
もし特徴が全く無いと感じるなら、そのことが突出した特徴である。
その特徴を上司が認識することで、特徴を強みとしての活用が初めて可能になるり、本人も自身がつき、結果的に人的資源が増大する。
目標を達成する確率は高まるはずです。
素晴らしい組織のあり方
人間の体は素晴らしい組織で、各組織に優劣はない。
企業活動においても、部署間に「役割の違い」はあっても「上下や優劣」はないことを組織の隅々まで徹底して認識させねばならない。
全ての人に1日は24時間しかなく、1人で担当できる分野など、全体から見ればほんの一部しかない。
一人一人の人間が、上手に人を使い、また、上手に人に使われるということは、会社全体が効率的に機能していくためには欠かせない。
人を使うことと、人に使われることはまるで人体組織のように美しい共存関係で繋がることだと私は信じている。
企業において重要なこと
企業において重要なのは「組織としてどう効率的に機能させるか?」です。
そのためにはまず、
- 目的を共有
- それぞれの役割を明確にする
- 上下の優劣ではなく共存依存関係で統合された人体組織のような状態を理想にする
べきです。
優秀な個人を多く集めること以上に、その個々をシステムとして機能させることを重視します。
個ではなく組織として様々な能力を共有させて、消費者のプレファレンスを勝ち取るための戦略に則って何度も試行させ、組織システムとして機能するように経験を積ませていきます。
基本的な能力を備えたマーケティング組織は、3〜5年もあれば十分に可能だと私は考えています。
最後に
もっと理解を深めたい人は実際に書籍を手にとって読んでみてください。